レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症は、もの忘れだけでなく、「見えないはずのものが見える」「意識がはっきりしている時とボーッとしている時の差が大きい」「手足が震える・動きが遅くなる」といった特徴を持つ認知症です。
アルツハイマー型認知症に比べて、
- はっきりした幻視(虫・人・動物などが見える)
- 誰が見ても分かるような注意力・意識の fluctuation(良い時と悪い時の波)
- パーキンソン病に似た症状(動きのにぶさ・小股歩行など)
が出やすいことが特徴です。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症では、脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質のかたまりがたまり、神経細胞が少しずつ壊れていくことが分かっています。
脳の中でも、
- 注意・覚醒を保つ部分
- 動きを調整する部分
- 物事を認知・判断する部分
などが影響を受けることで、認知症状・パーキンソン症状・睡眠の問題などが組み合わさって現れます。
年齢や体質、生活習慣病などがリスクとされていますが、はっきりした「これだけが原因」というものが分かっているわけではありません。
レビー小体型認知症の症状
注意力・意識の変動
- ある日はしっかり会話できるのに、別の日や時間帯にはボーッとして話がかみ合わない
- 日によって「頭のはっきりさ」が大きく揺れ動く
- 周囲からは「日によって別人のようだ」と感じられる
幻視・妄想などの症状
- いないはずの人や子ども・動物・虫が「はっきり見える」
- 本人にとってはとてもリアルで、「そこにいる」と訴える
- 「家の中に知らない人がいる」「盗られた」などの被害的な訴えが出ることもある
パーキンソン病に似た症状
- 動きが遅い・歩き出しにくい・小股歩行
- 手足の震え(ふるえ)
- 体が前かがみになり、転びやすくなる
- 声が小さくなる
睡眠・自律神経の症状
- 夢の内容に合わせて、寝ながら大声を出したり、手足を大きく動かしたりする(レム睡眠行動異常)
- 立ち上がった時にふらつく(起立性低血圧)
- 便秘・尿のトラブル・発汗の異常など
認知機能の変化
- 物忘れだけでなく、空間把握(道に迷う・駐車が苦手になる)や「見たものを正しく認識する力」が落ちやすい
- 注意力・判断力の落ち込みに「波」がある
こうした症状が組み合わさって出ている場合、レビー小体型認知症の可能性を考えます。
診断は、
- 本人・ご家族からの詳しい経過の聞き取り
- 認知機能検査
- パーキンソン症状の有無の診察
- 薬の影響のチェック
などを総合して行います。
レビー小体型認知症の診断には、
- 頭部MRI・CT で脳の萎縮や他の病気の有無を確認する
- 必要に応じて、専門医療機関での SPECT / MIBG など追加検査を検討する
といったステップが役立ちます。
当院では頭部MRI・CTなどの画像検査は実施していません。
そのため、レビー小体型認知症が疑われ、画像検査が必要と判断される場合には、一度他の医療機関で検査を受けていただき、その結果を共有していただいたうえで診断・治療方針を検討します。
必要に応じて、もの忘れ外来・神経内科など、適切な紹介先についてもご相談させていただきます。
レビー小体型認知症の治療方法
レビー小体型認知症も、アルツハイマー型認知症と同様に「完全に元通りに治す薬」は現時点でありませんが、
- 認知機能の症状をゆるやかにする
- 幻視・不安・興奮などの症状を和らげる
- 日常生活や介護の負担を軽くする
ことを目標に治療・支援を行います。
薬物療法
- コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)が、認知機能や幻視・注意力の改善に役立つことがあります。
- パーキンソン症状(動きのにぶさ・ふるえ)が強い場合、神経内科と相談のうえでパーキンソン病の薬を使うことがあります。
注意点として、レビー小体型認知症では一部の抗精神病薬(特に古いタイプのもの)への過敏性が高く、「少量でも強い副作用が出る」ことがあります。
そのため、幻視や妄想・興奮に対して薬が必要な場合でも、
- 薬の選び方
- 量
- 使う期間
に特に注意しながら、できるだけ少ない量で慎重に使用します。
生活環境の調整
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が、強迫症状に対して有効であることが分かっています。
不安や強迫観念の強さを和らげ、認知行動療法に取り組みやすくするためにも使われます。効果が出るまでに時間がかかることが多いため、様子を見ながら量や種類を調整していきます。
- 幻視があっても、必ずしも「すぐ薬で消す」ことが必要なわけではなく、本人があまり困っていなければ、環境調整や声かけで対応することもあります。
- 屋内の段差・照明・家具の配置などを見直し、転倒のリスクを減らす
- 「時間・場所」がわかりやすいように、時計・カレンダー・メモなどを活用する
- 生活リズム(起床・食事・就寝)をある程度一定に保つ
レビー小体型認知症では、日によって調子の波が大きいため、「調子の良い時間帯に大事な用事を合わせる」など、ペース配分の工夫も重要です。
家族への支援・福祉サービスの利用
幻視や行動の変化により、ご家族の負担が大きくなりやすい病気でもあります。
- 介護保険の申請
- デイサービス・訪問介護・ショートステイなどの利用
- 地域包括支援センター・ケアマネジャーとの連携
を通して、家族だけで抱え込まない体制を作ることが大切です。
本人・家族ともに、「病気の特徴」を知ることで、行動の意味が少し分かるようになり、受け止め方が変わることも多くあります。
最後に
レビー小体型認知症は、
- 日によってしっかりしている時と混乱している時の差が激しい
- 見えないはずのものがリアルに見える
- 体の動きもパーキンソン病のように変わってくる
といった多面的な症状を持つため、周囲からも理解されにくく、ご本人もご家族も戸惑いやすい病気です。
早い段階から、
- 病気の特徴を共有する
- 使える医療・介護サービスを知っておく
- 生活環境を整える
ことで、「どうしようもない混乱」ではなく、「付き合い方を工夫できる状態」に近づけていくことが可能です。
もの忘れに加えて、幻視や動きの変化・意識の波が気になる場合は、一度相談していただければと思います。
当院では、問診・認知機能評価を行い、必要に応じて画像検査が可能な医療機関や専門外来と連携しながら、今後の方針を一緒に考えていきます。
よくある質問
アルツハイマー型認知症と何が違うのですか?
大まかな違いとしては、
<アルツハイマー型認知症>
・物忘れが目立つところから始まることが多い
・幻視は必ずしも強くない
・パーキンソン症状は目立たないことが多い
<レビー小体型認知症>
・注意力や意識の「良い日・悪い日」の波が大きい
・リアルな幻視(人・動物・虫など)が出やすい
・パーキンソン病に似た動きの症状が加わることが多い
という特徴があります。
ただし、両者が重なっている方もおり、診断名よりも「その人に今どんな症状があり、何に困っているか」を把握することが大切です。
パーキンソン病とどう関係しているのですか?
レビー小体型認知症とパーキンソン病は、どちらも「レビー小体」という異常たんぱく質が関わる病気で、同じグループの病気と考えられています。
・先にパーキンソン症状が出て、数年後に認知症が目立ってくる場合
・先に認知症症状が出て、後からパーキンソン症状が目立ってくる場合
があり、発症の順番によって病名のつけ方は少し変わりますが、臨床上は「どの症状に対して、どう支援するか」が重要になります。
