アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、少しずつ記憶力や判断力が低下していく病気です。
最初は

  • 「最近のことが思い出しにくい」
  • 「同じことを何度も聞いてしまう」

などの変化から始まり、ゆっくりと進行していきます。
年を取ると誰でも物忘れは増えますが、

  • 物事の「一部」を忘れるのではなく「体験そのもの」を忘れてしまう
  • 日常生活やお金の管理などに支障が出てくる

といった場合、認知症の可能性があります。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症では、脳の中に

  • アミロイドβ
  • タウたんぱく

などの異常なたんぱく質が少しずつたまり、神経細胞がゆっくりと傷んでいくことで、記憶をはじめとする認知機能が低下していくと考えられています。

原因はひとつではなく、

  • 加齢
  • 遺伝的な要因(家族内に似た病気の方がいる場合もあります)
  • 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)
  • 喫煙・運動不足

などが組み合わさって発症リスクに関わるとされています。

アルツハイマー型認知症の症状

初期に目立ちやすい症状

  • 数分〜数時間前の出来事を忘れてしまう(食事をしたこと・電話をしたことなどを覚えていない)
  • 同じ質問や話を何度もくり返す
  • 大事な約束や予定を忘れてしまう
  • 財布や鍵、通帳などの置き場所が分からなくなることが増える
  • 慣れた道でも迷うことが出てくる

進行とともに現れやすい症状

  • 日付や時間・季節の感覚があいまいになる
  • お金の計算や買い物、銀行や役所の手続きが難しくなる
  • 料理・掃除・洗濯など、複数の手順が必要な家事がうまくできなくなる
  • 新しい情報を覚えられず、昔の記憶との混同が増える
  • 家族や身近な人を見間違える、誤解からトラブルになりやすくなる

行動・心理症状(BPSD)

進行に伴い、

  • 不安・イライラ・落ち込み
  • 被害的な訴え(「お金を盗られた」など)
  • 夕方から夜にかけての落ち着かなさ(いわゆる「夕暮れ症候群」)
  • 徘徊・同じ行動のくり返し

などが出てくることがあります。

こうした症状は、脳の病気による症状の一部として理解されます。

診断は、

  • 本人・ご家族からの聞き取り(どのような変化が、いつ頃から、どのくらいのペースで進んでいるか)
  • 簡単な認知機能検査(HDS-R、MMSEなど)
  • 身体・神経学的な診察

をもとに総合的に行います。

また、

  • 脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など、別の病気が隠れていないか
  • 脳の萎縮の状態

を確認するために、頭部MRIやCTといった画像検査が役立ちます。

当院では、頭部MRI・CTなどの画像検査は実施していません。
そのため、
画像検査が必要と判断される場合には、一度他の医療機関で検査を受けていただき、その結果を共有していただいたうえで、診断・治療方針を一緒に考えていきます。
必要に応じて、紹介先の医療機関についてもご相談させていただきます。

アルツハイマー型認知症の治療方法

アルツハイマー型認知症を「完全に元に戻す薬」は現時点ではありませんが、

  • 進行をゆるやかにする
  • 行動・心理症状(不安・興奮・幻覚など)を和らげる
  • 患者さんと家族の負担を減らす

ことを目指した治療や支援があります。

薬物療法

アルツハイマー型認知症では、

  • コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)
  • NMDA受容体拮抗薬(メマンチンなど)

といった薬が使われることがあります。
これらの薬は、

  • 記憶や判断力の低下を少しゆるやかにする
  • 日常生活の動作を保つ時間を延ばす

ことが期待されますが、効果には個人差があり、副作用(吐き気・食欲低下・めまいなど)が出ることもあります。
興奮・不眠・強い不安・幻覚などが目立つ場合には、必要に応じて少量の向精神薬を用いることがありますが、転倒やふらつきのリスクもあるため、できるだけ少ない量で慎重に使用します。

生活環境の調整・リハビリテーション

  • 本人が混乱しにくいよう、生活リズムをできるだけ一定に保つ
  • 部屋や家の中の物の配置を分かりやすくし、転倒の危険を減らす
  • カレンダー・メモ・写真などを活用して、「見て分かる工夫」を取り入れる
  • 散歩や簡単な家事など、無理のない範囲でからだと頭を動かす機会を作る

といった環境調整が大切です。
過度なトレーニングを頑張りすぎるよりも、その人らしいペースで、できることを続けていくことを重視します。

家族への支援・福祉サービスの利用

認知症の治療は、本人だけでなく、ご家族や介護者の負担を減らすことも大きな柱です。

  • 介護保険の申請
  • 訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの利用
  • 地域包括支援センターやケアマネジャーとの連携

などを通して、「家族だけで抱え込まない」体制を整えていくことが重要です。
当院では、地域の相談窓口や介護サービス、必要に応じて他科(もの忘れ外来・神経内科など)と連携しながら、医療と介護の両面で支えていくことを目指します。

最後に

アルツハイマー型認知症は、ゆっくりと進行する病気ですが、

  • 早めに気づく
  • 本人と家族が病気について理解する
  • 医療と介護のサポートをうまく使う

ことで、その人らしさを保ちながら過ごせる時間を長くしていくことが可能です。

「年のせいだから」と全てを片づけてしまうのではなく、

  • 物忘れがはっきり増えてきた
  • お金の管理や家事に目立つ変化がある
  • 妄想や不安、行動の変化が目立ってきた

といったサインがある場合には、一度ご相談いただければと思います。

当院では、問診・認知機能検査を中心に評価を行い、必要に応じて画像検査を実施できる医療機関と連携しながら、今後の見通しや対応について一緒に考えていきます。

よくある質問

物忘れと認知症の違いは何ですか?

年齢とともに増える「加齢による物忘れ」では、
・体験の一部を忘れる(「何を食べたか」を忘れるが、「食事したこと自体」は覚えている)
・ヒントがあれば思い出せることが多い
のが特徴です。
アルツハイマー型認知症では、
・体験そのものを忘れてしまう(「食事をしたこと自体」を覚えていない)
・同じ話を何度も繰り返す
・生活やお金の管理に支障が出てくる
といった点が大きな違いです。
日常生活に明らかな支障が出始めている場合は、認知症を疑って評価を行う必要があります。

アルツハイマー型認知症は治りますか?

元通りに治す薬はありません。
ただし、
・症状をゆるやかにする薬
・不安・興奮・睡眠の問題などを和らげる薬
・生活環境や介護体制の調整
を組み合わせることで、できることを保ちながら過ごせるよう工夫していくことはできます。

一人暮らしはどのくらいまで可能でしょうか?

物忘れの程度や、
・火の始末
・お金の管理
・食事・服薬・通院
・緊急時の対応
がどの程度自分でできるかによって大きく変わります。
初期の段階では、見守りや支援を組み合わせながら一人暮らしを続けられる場合もありますが、
・ガスの消し忘れ徘徊
・お金のトラブル
などが目立ってくる場合には、安全のために住まい方や介護体制を見直す必要があります。
診察の中で、本人・ご家族の状況を伺いながら、地域包括支援センターやケアマネジャーとも連携して、「どの時点で何を検討するか」を一緒に整理していきます。