不眠症とは
不眠症は、
- 寝つきが悪い
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝早く目が覚めてそのまま眠れない
- 眠っても休んだ感じがしない
といった状態が続き、そのために 日中のだるさ・集中力低下・仕事や家事の能率低下・気分の落ち込みなどが起こっている状態をいいます。
一時的な寝不足は誰にでもありますが、週に数回以上の不眠が、数週間〜数か月以上続き、日中の生活に支障が出ている場合、不眠症として治療の対象になります。
不眠症の原因
不眠症の原因は一つではなく、いくつかの要因が重なって起こります。
- ストレス・悩みごと
仕事・家庭・人間関係・健康の心配などで頭が冴えてしまい、布団に入っても考えが止まらない。 - こころの病気
うつ病・不安症・双極性障害などでは、不眠が症状の一つとしてよくみられます。 - 生活リズムの乱れ
夜更かし、休日の寝だめ、シフト勤務、寝る前のスマホ・PCの長時間使用など。 - カフェイン・アルコール・喫煙
コーヒー・エナジードリンク・お茶・タバコは脳を「起きるモード」にし、アルコールは「寝つきは良くなるが眠りを浅くする」作用があります。 - 加齢・身体の病気・薬の影響
加齢に伴う睡眠の変化、痛み・かゆみ・頻尿などの身体疾患、一部の薬(ステロイド・抗がん剤など)が不眠を起こすこともあります。
不眠が続くと、
「眠れなかったらどうしよう」
という不安が強まり、不眠への不安そのものが、さらに眠りを悪くする悪循環に陥ることがあります。
不眠症の症状
不眠のタイプ
- 入眠困難:布団に入ってから眠りにつくまでに1〜2時間以上かかる
- 中途覚醒:夜中に何度も目が覚め、そこからなかなか眠れない
- 早朝覚醒:予定よりかなり早く目が覚め、そのまま眠れない
- 熟眠障害:ある程度寝ているはずなのに、眠った感じがしない・疲れが取れない
日中の症状
- だるさ・倦怠感が続き、仕事や家事の効率が落ちる
- 集中力・注意力が低下し、ミスが増える
- イライラしやすくなる、気分が落ち込む
- 休日に昼過ぎまで寝てしまい、さらに生活リズムが乱れる
こうした状態が続くと、
「眠りのことを考えるだけで不安になる」
という状況になり、本人のつらさはかなり大きなものになります。
不眠症の治療方法
当院では、生活リズムの調整や考え方の見直しを土台にしつつ、必要に応じて薬を使う方針で不眠症の治療を行います。
睡眠習慣・生活リズムの見直し(睡眠衛生指導)
現在の睡眠・生活パターンを詳しくうかがい、
- 就寝・起床時間のばらつき
- 昼寝の有無と長さ
- カフェイン・アルコール・喫煙の習慣
- 寝る前のスマホ・PC・TVの使い方
などを一緒に整理します。
そのうえで、
- 「何時に寝るか」より「毎日同じ時間に起きる」ことを軸にリズムを整える
- ベッドを「眠る場所」に戻し、長時間ダラダラ横になりすぎない
- 寝つきが悪いときは、いったんベッドを出て、静かでリラックスできる行動を短い時間だけ行い、眠気が戻ったら再び横になる
など、睡眠と付き合う具体的なコツをお伝えし、少しずつ整えていきます。
認知行動療法的アプローチ(不眠症のCBT要素)
「8時間寝ないとダメ」「4時間しか寝ていないから今日はもう終わりだ」など、睡眠に対する思い込みが強いと、それ自体が不安をあおり、不眠を悪化させます。
診察の中で、
- 睡眠に関する考え方のくせ
- 不安を高めてしまう行動(眠れないのに早くからベッドに入る、週末に極端に寝だめをする 等)
を整理し、負担の少ない範囲で「不眠症の認知行動療法(CBT-I)」の考え方を取り入れていきます。
※当院には専任のカウンセラーはいないため、本格的なプログラムが必要と判断される場合は、他院や専門機関をご紹介することがあります。
薬物療法(睡眠薬など)
症状の程度・期間・背景となる病気に応じて、睡眠薬や一部の抗うつ薬などを用いることがあります。
- 入眠困難が中心か中途覚醒・早朝覚醒が目立つか
- うつ病・不安症などが背景にあるか
を踏まえて薬の種類を選び、
できるだけ少ない量で、必要な期間に限って使う
ことを心がけます。
また、うつ病・不安症・双極性障害など他の病気が背景にある場合には、その治療を併行して行うことが、不眠の改善につながることが多くあります。
身体の病気や他の睡眠障害のチェック
いびき・睡眠時の呼吸の乱れ・足の不快感・日中の強い眠気などが目立つ場合には、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、別の睡眠障害の可能性も考えます。
その際には、必要に応じて内科・耳鼻科・睡眠専門外来への受診をご案内することがあります。
最後に
不眠症は、「気合いの問題」でも「我慢すればそのうち治るもの」でもありません。
眠れない状態が続くと、こころも体もすり減っていき、うつ病や不安症につながることもあります。
生活リズムの調整・考え方の見直し・適切な薬物療法を組み合わせることで、少しずつ「眠りに振り回されない状態」に近づいていくことは十分に可能です。
「眠れない日が続いてつらい」「睡眠薬やお酒に頼り始めている」と感じた時点で、一度相談していただければと思います。
よくある質問
何時間眠れれば大丈夫なのでしょうか?
「7〜8時間が理想」と言われることはありますが、大切なのは「時間」よりも「日中どれくらい支障があるか」です。
5〜6時間でも元気に過ごせる人もいれば、8時間寝ても眠い人もいます。
「○時間寝なければいけない」という思い込みが強すぎると、それ自体が不安を増やし、不眠を悪化させてしまうことがあります。
市販の睡眠改善薬やサプリで様子を見てもいいですか?
一時的な寝つきの悪さに、市販薬やサプリが役立つこともありますが、
・効果が不十分でダラダラ飲み続けてしまう
・本来治療が必要なうつ病・不安症を見逃してしまう
といった問題もあります。
数週間以上、不眠が続いている場合や、日中の支障がはっきりしている場合は、市販薬だけで様子を見るより、一度ご相談いただくことをおすすめします。
睡眠薬は一度飲み始めたらやめられなくなりませんか?
睡眠薬の中には、長期間・高用量で使用するとやめにくくなる種類もありますが、
・適切な薬を選ぶ
・不必要に量を増やさない
・落ち着いてきたら、少しずつ減らす計画を立てる
ことで、依存のリスクを減らすことは可能です。
当院では、「ずっと飲み続けること」を前提にするのではなく、生活リズムやこころの状態も整えながら、将来的に減薬・中止も視野に入れた治療を行います。
アルコールで寝ているので、薬はいらないですよね?
アルコールは一時的に寝つきを良くすることがありますが、
・眠りを浅くする
・夜中に目が覚めやすくなる
・量が増えやすく、依存のリスクがある
といった問題があり、「睡眠の質」という意味ではマイナスです。
「お酒がないと眠れない」状態は、睡眠の問題とアルコールの問題が重なっている可能性があり、治療が必要なサインと考えてよい状況です。
