ADHD(注意欠如多動症)とは
ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」「多動性」「衝動性」の特徴が目立ち、日常生活や仕事・学業、人間関係に支障が出る状態をいいます。
子どもの頃から症状があることが多いですが、大人になってから困りごとが目立って受診し、初めて気づかれる方も少なくありません。
努力不足や性格の問題ではなく、脳の特性(発達特性)として理解されているものです。
(当院では、主に成人期のADHDについてのご相談をお受けしています。)
ADHD(注意欠如多動症)の原因
ADHDは、「しつけ」や「育て方」の問題ではありません。
- 脳の働きやすさの違い(注意の切り替え・抑制に関わるネットワークの特性)
- 遺伝的な要因(家族内に似た特性を持つ人がいることが多い)
- 周囲の環境やストレスのかかり方
など、いくつかの要因が重なって現れると考えられています。
ADHD(注意欠如多動症)の症状
不注意の症状
- 物忘れが多く、財布・鍵・スマホなどをよく探す
- 計画を立てることが苦手で、締切直前になって慌てる
- 書類やメールの細かい部分を見落とし、ミスが出やすい
- 興味のない作業に集中し続けるのが難しい
- 片づけが苦手で、部屋や職場の机が散らかりやすい
多動性・衝動性の症状
- じっと座っていると落ち着かず、つい立ち歩いたり、身体を動かしてしまう
- 頭の中が常にフル回転しているような感覚があり、疲れやすい
- 思いついたことをすぐ口に出してしまう、相手の話を最後まで聞くのが苦手
- 衝動買いをしてしまう、先の見通しよりも「今」の気分で動いてしまう
日常生活で起こりやすいこと
- スケジュール管理や事務作業が大きなストレスになる
- 仕事の評価にばらつきが出やすい(できる時はよくできるが、波が大きい)
- 片づけや家事が負担で、自分を責めてしまう
- うまくいかない経験が続き、二次的に「うつ症状」や「不安」が出てくる
ADHDの診断は、
- 子どもの頃からの様子
- 現在の仕事・学校・家庭での困りごと
- 他の病気との違い(うつ病・不安症・双極性障害など)
を、問診で丁寧にうかがいながら総合的に判断していきます。
知能検査(WAISなど)や注意機能の検査などの心理検査は、「補助的な情報」として役に立ちますが、それだけで診断が決まるものではありません。
当院には臨床心理士が在籍しておらず、院内での詳細な心理検査の実施は行っていません。
そのため、より詳しい検査が必要と判断される場合には、連携先や他院で心理検査を受けていただくようお願いすることがあります。
検査結果は、当院の診察と合わせて、今後の治療や支援の方針を一緒に考える材料として用いていきます。
ADHD(注意欠如多動症)の治療方法
病気や特性についての説明(心理教育)
「怠け」「性格の問題」ではなく、脳の特性として理解することが、自己否定感を減らす第一歩になります。
ご自身の強み・苦手な場面のパターンを整理し、「どこを工夫すると生活しやすくなるか」を一緒に考えていきます。
環境調整・具体的な工夫
- スケジュールやタスクを見える化する
- 物の置き場所を決め、ルールをシンプルにする
- 「一気に片づける」のではなく、小さなステップに分ける
- 締切より前に「自分なりの締切」を設定する
など、仕事や家庭での具体的な工夫を一緒に検討します。
精神療法・コーチング的な関わり
認知行動療法的な考え方を用いて、
- 自分を必要以上に責める考え方を和らげる
- 先延ばしや衝動的な行動パターンを見直す
などを行うことがあります。
必要に応じて、対人関係や自己評価の問題についても扱っていきます。
薬物療法
大人のADHDでは、メチルフェニデート製剤やアトモキセチン、グアンファシンなどの薬が用いられます。
- 注意力・集中力の改善
- 衝動性の軽減
などが期待されますが、すべての困りごとが「薬だけで解決する」わけではありません。
効果と副作用のバランスを確認しながら、生活の工夫と組み合わせて使っていきます。
最後に
ADHDの特性は、環境や仕事の内容によっては「強み」として働くこともあれば、「生きづらさ」として目立つこともあります。
これまでの経験から、「自分はだらしない」「続けられないダメな人だ」と感じている方も少なくありません。
大切なのは、「自分に合ったやり方・環境」を見つけていくことと、「診断名」よりも、今困っていることを一緒に整理し、現実的な対策を積み重ねていくことです。
必要に応じて他院での心理検査も活用しながら、ご自身の特性に合った生活スタイルを一緒に探していきます。
よくある質問
ADHDと、ただの「だらしなさ」や「性格の問題」は何が違いますか?
誰にでも「忘れっぽい日」や「片づけが苦手な部分」はあります。
ADHDでは、
・子どもの頃から続いている
・複数の場面(学校・職場・家庭など)で困りごとが出ている
・仕事や学業、人間関係に明らかな支障が出ている
といった点が特徴です。
「やろうとしているのに、どうしてもうまくいかない」状態が続くとき、発達特性としてのADHDを疑う価値があります。
大人になってからADHDと診断されることはありますか?
あります。子どもの頃は「落ち着きがない」「忘れ物が多い子」程度で済んでいたものが、大人になって仕事や家庭の責任が増えることで、初めて大きな支障として目立ってくることがあります。
また、長年うつ病や不安症として治療を受けてきた方の中に、背景にADHDの特性が見つかるケースも少なくありません。
