不安症(不安障害)

不安症(不安障害)とは

不安症(不安障害)は、過度な不安や心配、緊張が続き、日常生活に支障が出ている状態を指します。

  • 人前で話す・初対面の人と話す場面が非常につらい(社交不安)
  • 電車や人混み、特定の場所で強い不安発作が起こる(パニック症・広場恐怖)
  • 将来のことが常に心配で、頭から離れない(全般不安症)

など、症状の出方はさまざまですが、共通しているのは
「心配しすぎだと分かっていても止められない」
というつらさが続いていることです。
一時的な不安や緊張は誰にでもありますが、頻度・強さ・期間の面で「日常生活に支障が出ているかどうか」が治療の目安になります。

不安症(不安障害)の原因

不安症の原因は一つではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。

  • もともとの体質・気質
    心配性・慎重さ・まじめさなどの気質は、生まれつきの要素と環境の両方の影響を受けます。
  • 脳の働きの変化
    不安に関わる脳の部位(扁桃体など)が敏感になり、セロトニン・ノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが変化していることが分かっています。
  • ストレス・経験
    仕事・人間関係・病気・いじめ・事故・災害などのストレス経験が、不安を強めるきっかけになることがあります。
  • 学習されたパターン
    「この場面は危険だ」「また発作が起きるかもしれない」といった経験が重なることで、不安がさらに強化されていくことがあります。

こうした要因が組み合わさり、心とからだが「常に危険に備えすぎている状態」になっているのが不安症と考えられます。

不安症(不安障害)の症状

こころの症状

  • 将来のことが頭から離れず、常に最悪の事態を想像してしまう
  • 「また発作が起きたらどうしよう」「恥をかいたらどうしよう」と考え続けてしまう
  • 不安や恐怖で、その場面を避けるようになる
  • 落ち着かない、集中できない、イライラしやすい

からだの症状

  • 不安が高まると、自律神経の反応として次のような症状が出ることがあります。
  • 動悸・息苦しさ・胸の圧迫感
  • 手足の震え・汗・ほてり・冷え
  • めまい・ふらつき・吐き気・腹痛
  • 口の渇き・のどのつかえ感
  • 強い恐怖感・「このまま死んでしまうのでは」という感覚(パニック発作)

行動の変化

  • 電車・バス・エレベーター・人混みなどを避けるようになる
  • 人前で話す場面や会食、電話応対などを避ける
  • 心配を打ち消すために、何度も確認したり、他人に安心を求め続ける

不安は「自分で何とかしよう」と抱え込みやすいため、周囲からは伝わりにくい一方で、本人にとっては生活全体を縛るほどのつらさになっていることが少なくありません。

不安症(不安障害)の治療方法

精神療法・カウンセリング(認知行動療法など)

不安を高めてしまう考え方のくせ(「最悪のことばかり想像する」「失敗=終わりと感じる」など)や、不安を避けようとして余計につらくなっている行動パターンを一緒に整理します。
 少しずつ不安な場面に慣れていく「段階的な練習(エクスポージャー)」などを用いて、「不安と付き合いながら動ける状態」を目指します。

薬物療法

不安や緊張が強く続く場合には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を用いて、不安の出やすさを和らげることがあります。効果が出るまでに数週間かかることが多いため、様子を見ながら量や種類を調整していきます。
 急な強い不安に対しては、短期間だけ抗不安薬を併用することもありますが、依存性の問題があるため、「必要なときに、必要な量を、できるだけ短期間に」という使い方を心がけます。

生活リズム・環境の調整

睡眠不足や過労、カフェイン・アルコールのとりすぎは、不安を悪化させます。
 生活リズムを整え、休息の時間を確保し、仕事量や人間関係のストレスについても一緒に整理しながら、不安が高まりにくい環境づくりをしていきます。

再発予防と自己管理

症状が落ち着いても、ストレスが増えたときや環境が変わったときに不安が再び強まることがあります。
 「自分の不安のパターン」を理解し、早めに対処する方法(考え方の切り替え方、休み方、相談の仕方など)を身につけておくことが、再発予防につながります。

最後に

不安障害は、「気の持ちよう」で片づけられるものではなく、治療の対象となる病気です。
本人は「こんなことで不安になる自分が情けない」と感じて、周囲に打ち明けられないことも少なくありません。
つらさを我慢し続けるより、「少し不安が強すぎるかも」と感じた段階で早めに相談してもらうことで、日常生活に大きな支障が出る前に対応できる可能性が高まります。当院では、不安をゼロにすることだけを目指すのではなく、「不安と付き合いながら、やりたいことができる状態」を一緒に目指していきます。

よくある質問

「心配性」と「不安障害」はどう違いますか?

「心配性」は性格の傾向を指す言葉で、診断名ではありません。
不安障害は、心配や不安の強さ・頻度・続いている期間、生活への影響などを総合して、診断基準を満たした場合につく病名です。
簡単にいうと、
・日常生活に大きな支障がない範囲 → 心配性の傾向
・仕事・学校・人付き合いに明らかな支障が出ている → 不安障害の可能性
というイメージです。

パニック発作で救急に行きましたが、「異常なし」と言われました。本当に大丈夫なのでしょうか?

パニック発作では、動悸、息苦しさ、胸の痛み・圧迫感、めまい、手足のしびれなどが急激に出て、「このまま死ぬのでは」と感じることがあります。
救急外来で心臓や肺などに大きな異常がないことが確認された場合、不安・パニックの症状である可能性があります。
何度も繰り返すと「また起きたらどうしよう」という不安から、電車や外出を避けるようになり、日常生活が大きく制限されることがあります。精神科・心療内科での継続的な治療を受けることをおすすめします。

薬を飲み始めたらやめられなくなりませんか?依存性はありますか?

SSRIなどの抗うつ薬は、「やめられなくなる意味での依存性」はほとんどないとされています。一方で、一部の抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)は、長期間・高用量で使うと、依存性ややめにくさの問題が出ることがあります。
当院では、必要性・メリット・デメリットを説明したうえで、できるだけ依存性の少ない薬を中心に使い、抗不安薬は「必要な時期に、必要最小限」の使用を心がけます。自己判断で急に中止せず、減らすときは一緒に計画を立てていきます。